絶好の登山日和。前回の大丸山からわずか一週間ですが、帽子も被り本当によく歩いてくれるようになったチビツーの勢いを活かして、なるべく負担が小さく、かつ眺望の良いお山にチビツー自身の力で登ってもらいたいとの思いから、丹沢山塊表尾根の前衛峰、聖峰(ひじりみね)を目指すことにしました。
可能な限り短いルートを選びましたが、累積標高差はチビツーにとって過去最高。果たして登りきることができるのでしょうか?山頂からの絶景を拝むことはできるのでしょうか?
目次
聖峰
基本情報
聖峰(ひじりみね)は丹沢山塊表尾根の前衛峰の一つで、標高は375mと低山ですが、山頂前の聖峰不動尊前の広場は展望が非常に良く相模平野一帯を見渡すことができます。
バリアフリー情報
自然の中のハイキングコースです。残念ながらバリアフリーは期待できません!
トイレは山頂に簡易トイレがありますが、利用するのは結構な勇気が必要と思われます・・・。いつものことですが、念のために携帯トイレなどを持参することをオススメします。
お出かけ難易度
難易度:★★★★☆(4)
聖峰の登山口からは距離こそ1.1kmですが、標高差は170m程度あります。得手不得手はあると思いますが、予測が難しい自閉症の子にとっては色々なリスクが伴うので最悪、抱っこやおんぶをして引き返すことも覚悟しなければなりませんが、達成感は非常に大きいものになると思います。
聖峰登山口からスタート
聖峰登山口付近には車3台分ほどのスペースがあります。この坂の少し上にも2~3台の駐車スペースがあります。
チビツーまだまだ余裕の表情です。
聖峰までは1.1km。大人はもちろんチビワンにとっても楽チンな距離と勾配ですが、チビツーにとっては大きな難関となることでしょう。
それでは張り切って入山です。
ノッシノッシと闊歩。帽子も気になっている様子はなく、すっかり定着してきたようで嬉しく思います。
このあたりは決して急な勾配ではなく、歩きやすい登山道が続きます。
気持ちの良い新緑のトンネルの下を歩いて行きます。
前回の大丸山でも見せた、ポケットに手を突っ込んで歩く「不良歩き」。どうしても手を入れたくなってしまうんですよね。
なんてことは無い登山道なのですが、緩いとはいえ坂道である以上は多少なりともチビツーには負担のかかること。なかなか笑顔がでないのが少し不安になりましたが・・・
そんな時にはお兄ちゃんであるチビワンが手を差し伸べてくれます。ナイスフォロー!
しばらく歩くと行く手を塞ぐフェンスが現れます。思わず「行き止まり?」とチビワン。
これは獣害対策用の柵でした。獣害被害の多い丹沢山地ではよく見かける光景です。以前チビワンと二人で歩いた大野山の登山道にもありましたね。
「ちょっとー、どうなってんのコレー」と言わんばかりのチビツー
フェンスを越えて先に進みます。
この先は「ひじりの森」と呼ばれているそうですね。
フェンスの先はしばらく平地なのですが、ここでようやくチビツーの笑顔が見られました。
うっすらと頬を流れる汗がチビツーをより逞しく見せてくれました。
緊張もほぐれてきたかな?
さらにチビワンが盛り上げてくれます。
ここは分岐というわけではないのですが、並走する右の道を行くと「山の神社」があります。ちょっとした祠があり、無事登頂を願ってお参りしたいところですが、なるべく短期勝負をしたかったので左の舗装路を進みます。
なにやらチビワンが儀式を執り行っております。
大好きなやつ(笑)。闘魂注入の儀でした。
さらに両手を繋ぐことで元気いっぱい。
楽しそうでなにより!(ピンぼけですが)
この調子で女坂を無事に攻略できるかな!?
女坂での奮闘。長かった600m
ここは女坂と男坂の分岐点。舗装路の道なりに右(まっすぐ)に行くと女坂。左斜め方向に山道を登ると男坂。男坂はチビツーには急すぎると思い、女坂を進むことにします。
なぜ片方が距離でもう片方が時間なのかわかりませんが・・・
聖峰まで600m。こうやって数字を見るとすぐに着いてしまいそうなイメージなんですけどね。
チビワンにしっかり手を繋いでもらい、女坂に臨みます。
のんびり歩くには本当に気持ちの良い道ですが、チビツーは少々疲れてきた様子・・・。
今までの経験からすると、チラチラとまわりを見るようになったというのは集中力が切れてきた証拠。
定型発達児(=健常児)であれば、こんな壁を見て「おぉ~!」とかなったのかもしれませんが、チビツーにはそれができません。
すでに女坂の6割ほどは登ったのですが、このあたりでチビツーから不満の発声が止まらなくなります。
そんな時は釣りだ!というチビワンの提案でヌードルをエサにしましたが効果無し。。。出すのが遅かったかな?
未来予測の困難
後ろからなので表情はわかりませんが、もう今にも泣きだしそうだったのです。
チビツーには、「もう少し」とか「あと○○で終わり」という未来の予測や提示が非常に困難です。これが意味するのは「いつ終わるのかもわからない」ということ。本当に、上の写真の先に見える道の終点が山頂なのですが、それを伝える術がありません。これも重度の知的障害の厳しい現実です。
チビワンがラストスパートダッシュ!
「ここがゴールだよー!」とヌードル片手にチビツーを鼓舞しますが、残念ながら効果は無く・・・
チビツーには、知的障害に加えて、自閉症特有の「こだわり」というものも出る時があります。本来であれば疲れて動けないのなら私が抱っこのポーズを見せればそれを受け入れるのですが、この時はどうあっても「拒否」でした。
一見「自分の足で頑張る!」のように見えなくもないのですが、これはあきらかに「自分がこうやると思ったら絶対に譲らないこだわり」。聞こえは悪くないかもしれませんが、自分の意志でも制御できないというのが何よりも酷なことなのです。
休むことも拒否、抱っこも拒否。
このことから、ここまでの負荷のかかる登山はNGということ。山頂まであと1分にも満たない距離だったのが幸いですが、これは一つの目安になりました。
苦難の末、辿り着いた山頂
午後11時28分。チビツーにとって長い長い坂道を乗り越えて、ついに山頂に到着しました。
これが聖峰不動尊です。
反対の東側を向くと、相模平野を見渡す眺望。霞が強いですがそれでも十分見ごたえがあります。
ちなみにこれは去年私がナイトハイク的に歩いたときに同じ場所から撮影したものです。大人の足なら登山口からは30分もかからないので、ヘッドライト持参で登ってみるのもオススメです。
さぁがんばったご褒美、大好きなヌードルを食べましょう。
本当によく頑張ったね。ヌードルはもちろん、お稲荷さんもしっかり二個食べてお腹も満たされ、ようやく落ち着きを取り戻したチビツーでした。
元気も出てきて、山頂で楽しく遊べる余裕も出てきました。
やっぱりコレだよね!
嬉しそうな笑顔が一番!
見てごらん。自分の足で頑張って登って手にしたこの眺望。チビツーの瞳にはどう映ったのかな。
この後も元気に山頂を駆け回っていましたが、下山の体力が無くなっても困るのでそろそろ下山を開始しましょう!
下山は男坂で
下山は男坂を下ることにします。山頂周辺はツツジが綺麗に咲き誇っていました。
まさに花道ですね。チビツーの頑張りを祝福するかのよう。
男坂は急勾配ではありますが、九十九折になっているので登山道自体はさほど辛くはありません。
こうやって見るとわかりやすいですね。もっとも負担の少ない歩き方ができます。
考えてみれば短期決戦をするなら男坂でも良かったのでは?と思いましたが・・・答えを出すのは難しいところですね。けどいつかはチャレンジしてみたいですね。
谷側をしっかりチビワンにカバーしてもらいました。
あまりにも狭いところはチビワン先行で。
チビワンに手を繋いでもらうことで、精神的負担は少なからず軽減されていると思います。
時には先導して・・・
時には構ってあげて、親バカですが本当に弟想いのよいお兄ちゃんだなぁと。
その甲斐もあって、あっという間に男坂・女坂の分岐まで戻ってきました。
ここからは下りパワー全開です。
歩きながらの笑顔もバッチリ。
これまたあっという間の鹿よけフェンス。
チビワンのエスコードで通り抜けます。
開けたら閉めるを忘れずにね。
ここまで来ればゴールは目前。下りということもあってついに小走りのチビツー。
それを追うチビワンに・・・
捕まったぁ~(チビワンの大好きな「逃走中」風に)
一時はどうなることかと思いましたが、ショートコースといえどゴールを目前に感慨深いものがありました。
登山口に到着です。
午後12時36分。無事下山しました。お疲れさま!
チビツーはよくがんばったね。チビワンもしっかりフォローありがとう!
振り返って
帽子もずっと被ってくれたし、何よりもこの標高差を登りきってくれましたが、良くも悪くもチビツーの限界を知った登山でした。当面は同じ負荷のお山も避けた方がいいでしょう。悪いイメージを持たせないためにも暫くは超お手軽なお山、というかピクニック程度に抑えた方が今後のためかと。
それはそれで、一つの目安ができたということで大きな収穫のある登山だったと思います。
- 出発時刻 / 高度: 10:33 / 173m
- 到着時刻 / 高度: 12:36 / 173m
- 合計時間: 2時間3分
- 合計距離: 1.76km
- 最高点の標高: 345m
- 最低点の標高: 166m
- 累積標高(上り): 170m
- 累積標高(下り): 169m
Reliveで山行振り返り