前回の仙元山ハイキングから二週間。鉄は熱いうちに打てと言わんばかりに次のお山へ。今回は何度もお世話になっている横浜市最高峰の大丸山(おおまるやま)。そして今回は完歩というよりはチビツーの帽子着用訓練がメインの目的。
暑くなる前に帽子を被れるようになってもらいたい。3~4年越し(?)の父の願いは果たして成就するのでしょうか・・・?
目次
大丸山
基本情報
横浜市の栄区と金沢区の区境にある、横浜市最高峰の山(156.8m)です。横浜自然観察の森の中にあります。山頂からは金沢方面と横浜の湾岸部を見渡すことができます。
横浜自然観察の森ハイキングコース(横浜市発行・2020年版)はこちら。
円海山周辺のハイキングコース(横浜市発行・2021年版)はこちら。※自然観察の森を含むより広範囲なマップです。
2019年秋の台風の影響により、コース上で一部工事や補強作業が行われている箇所が点在しています。当記事で歩いたコースは2020年11月14日時点では通行可能となっていますが、その他のコースについては十分に事前確認してから散策してください。
バリアフリー情報
自然の中のハイキングコースです。残念ながらバリアフリーは期待できません!
とはいえ一般的な登山道とは異なり、ベンチなどは多数あります。ただ昨今の新型コロナウイルス感染防止のため、ベンチにもソーシャルディスタンスを確保するよう注意書きが多く貼られています。
また当記事で紹介するルート上にはトイレは下記の三か所にて利用可能ですが、一部メンテナンス中のトイレもありました。
- 上郷・森の家別館のトイレ(※この日はメンテ中でした)
- タンポポの道終点付近のトイレ(※多目的トイレ)
- (わずかにルートから外れますが)自然観察センターのトイレ
マップを見るとわかると思いますが、トイレは比較的スタート地点に集中しています。山頂およびその付近ではトイレは無いので、念のために携帯トイレなどを持参することをオススメします。
お出かけ難易度
難易度:★★★★☆(4)
本格的な登山ほどではありませんが、自然の中のハイキングコースを歩くという負荷のかかる行為です。予測が難しい自閉症の子にとっては色々なリスクが伴うので最悪、抱っこやおんぶをして引き返すことも覚悟しなければなりませんが、達成感は非常に大きいものになると思います。
上郷・森の家からスタート
いつもの上郷・森の家駐車場からのスタートです。午後からの雨の予報が信じられないほどの青空スタート。日差しもしっかりあるので、チビツーの帽子着用はぜひとも成功させたいところ。
ちなみにこの上郷・森の家、チビワンの通う小学校では高学年時に野外活動の一環として利用する予定だそうです。
◼️上郷・森の家 第一駐車場
平日:3時間まで無料。以後1時間ごとに\100。最大料金 \500
土日:\500/日
早速駐車場から帽子を被せてみると・・・おや、意外にも拒否反応を示さず、(偶然ですが)ガッツポーズ(笑)
自閉症には、感覚過敏が伴う場合が多く見受けられます。「息苦しい」「繊維の感触が苦手」等々理由は様々ですが、人よりもセンサーとしての触覚が敏感すぎるゆえのもの。
ドローコードでしっかり留めているので、風で飛ぶことはないと思いますが、このまま被り続けてくれるのでしょうかね。
チビツーのように重度の知的障害を伴う自閉症の場合、言葉を発することができないために代替手段を考えるのも困難な場合が多いです。「慣れ」で解消される場合もありますが、どちらかというとそれで解消されるケースは少ないほうです。
いつも通り、別館裏口の「木の香坂」の階段を使って進みます。
ふむ。階段に集中しているためか(?)、帽子には意識が集中していないようで。いいぞ、この調子!
階段終点で待っていたチビツーと合流。
横浜自然観察の森
ここが横浜自然観察の森の正式な入口です。しばらくは勾配もなく舗装路なので、ウォーミングアップには最適です。
5月といえども快晴となるとなかなかに強い日差し。真夏でなくても帽子は必需品。
支援校(養護学校)では紅白帽の着用の訓練があります。先生のお話では、毎日数分間の着用で少しずつ被れるようになってきたとのことでした。
それを受けての今回の着用チャレンジでもあったわけですが、予想以上に防止への抵抗が無く、正直ここまででもかなり嬉しかったりしています。
と、思いきや(笑)
取り外してしまいました。まぁそう簡単に事が運ぶとは思っていませんでしたけどね。けど、この後また被らせても嫌がるそぶりは見せず、またしばらく被り続けてくれました。
実はこの帽子、チビワンのお下がりだったりします。上の写真は今から約6年前、4歳の誕生日を迎えたチビワンの誕生日プレゼントの一つとして買ったもの。最初に被ったのは北横岳(八ヶ岳)でした。それから6年間、酸いも甘いも経験したチビツーと一緒にお山を歩んできた帽子、きっとチビツーの力になってくれることでしょう。
ちなみにチビワンの帽子はというと・・・約6年間使用したハットは子供用とはいえキツくなって来たので新調しました。ついに大人用Sサイズです。
相変わらずキレイなトイレ。上郷・森の家のトイレが利用できなかったのでここでチビワン用を済ませます。
多動というほど酷いものではありませんが、色々なものが気になってしまうのでチビツーとのハイクは超マイペースです。
まぁ、こんな楽しそうな笑顔見せられた文句は何も無いんですけどね。
本当にいい天気です。自然観察センターからこのまままっすぐに進むと大丸山への最短コースになりますが、今日は関谷奥見晴台を経由するので右折します。
早速階段が待ち受けていました。ここからメインストリートの「ビートルズトレイル」に合流するには少し登高しなければなりません。先にゴールに立ってチビツーを呼ぶ作戦に出たチビワンですが・・・
チビツーはこのペース(笑)
まぁ、ゆっくりでいいんです。
いまだに2019年の台風の爪痕はここ円海山周辺の森一帯にも残っています。
段差のある登山道、通れるかな?
「マジすか?」と言わんばかりに一瞬固まるチビツーですが、なんとか頑張って登ってくれました。
で、一休み?
道幅に余裕があるときは、チビワンが横についてサポートしてくれました。
まぁ、すぐに先に行っちゃうんですが(笑)
とはいえ先に行きすぎじゃない!?チビワンのペースを考えると仕方ないことではあるんですけどね。
ビートルズトレイルと関谷奥見晴台
ビートルズトレイルに合流すると、一旦勾配は落ち着き、歩きやすい平坦な道が中心になります。
ここまででひーひー言うこともあったので、チビツーとしては息を整えられる場所になります。
出ました膝つきポーズ。やはりシンドかったかな?
どうしても未来予測ができない(こちらかも伝えられない)チビツーには、坂道でも全力になってしまいます。「あと○○分歩けばラクになるよ」といった言葉も通じません。「先行きが見えない」というのはかなりのストレスのはずです。
一瞬頭上が開けるところ。青空が見えて気持ちがよいのですが、やはり日差しもジリジリ。帽子が無かったらこの日差しもストレスとして加わったかもしれないと思うと、被り続けてくれて本当によかったと思います。
しばらくすると最初の分岐。まっすぐ行くとそのまま大丸山に直進しますが、少しだけ右に逸れます。
歩いて2~3で関谷奥見晴台。そのまま進むと動物園もある金沢自然公園に繋がります。
そのままチビワンに連行されてサポートされて進むと・・・
視界が次第に開けて・・・
関谷奥見晴台に到着です。ここで少し休憩にしましょう。
おやつ休憩。まだ30分ちょっとなんですけどね。あくまでチビツーペースで。
今のところずっと帽子を被り続けてくれているチビツー。もう大丈夫かな?
大丸山山頂ほどではありませんが、円海山周辺の森の中では、ここもなかなかに良い景色です。
おやつのおかげで元気に復活!
楽しそうに走り回っていますが、このまま放置すると大丸山へ歩く体力まで削られそうなので、そろそろ出発しましょうか。
笑顔も戻りましたね。
見晴らし台から少し進むと、先程の分岐で別れたビートルズトレイルに再度合流します。
しばらくすると、見覚えのある看板が。自然観察センターからヘイケボタルの湿地を経由する最短ルートとの合流です。
ここまでくれば大丸山への取り付きまではあとわずかですが、あくまでマイペースは崩さずに。
そしていよいよ最後の難関、大丸山山頂への階段です。
大丸山山頂へ
チビワンサポートのもと、いざ取り付きです。
「ひーほー」言ってるので、チビツーなりの負荷がかかっているはずですが、それでも頑張って階段を一歩一歩登っていきます。
ほとんど立ち止まらず、階段を登り切りました。がんばったね!
12時18分、横浜市最高峰 大丸山(156m)到着です。お疲れさまでした。
・・・って、あれ?なんか山頂からの視界が広くなっているような?
どうやら目の前の木を伐採したようですね。視界のために伐採というのも少々気が引ける感じはしますが・・・。
まぁ、大人の事情は置いといて、ここは楽しみながらランチにしましょう。
まだヌードルは一人で食べるのは難しいので補助が必要ですが、スープだけならこの通り。兄弟仲良くシーフード!
食後はまったりと。
写真のレタッチで苦労するほどコントラストが強くなる日差しなので、しつこいようですが、帽子を被り続けてくれて本当によかった・・・。
予報ではあと3時間もすれば雨が降り出すとのことですが、そんな様子を感じさせない抜けるような青空でした。
柵に両腕をかけて景色を眺めるのがここ最近のチビツーのお気に入り。
チビワンも一緒に♪
しばらくこのままのんびり。
過去何回かはこの場所では私がチビツーを抱っこしていましたが、今日はチビワンとツーショット。奇跡的にカメラ目線もバッチリです。
がんばりましたね。
名残惜しいかのように、最後にもう一度。
では、下山しましょう。
力を振り絞っての下山
下りとはいえ、登りとは違った体力・筋力が必要です。ちょっと力を使い過ぎたのか、歩みを止める頻度が少し多くなってしまいました。
それでも頑張って、ときには小走りになりながら(笑)歩いてくれました。
元気があれば同じルートを戻ることも考えたのですが、今回は最短ルートで帰ったほうが賢明のようなので、ヘイケボタルの湿地方面へ進みます。左の道は先ほど通った関谷奥見晴台からのルートですね。
青々とした新緑が見事ですが、日差しはなかなかのものでした。ヘイケボタルの湿地に寄ろうかと思ったのですが、少々チビツーの機嫌も怪しくなってきたのでスルー。
舗装路まで戻ってきました。ここまでくれば歩きやすい平坦道。
「あ、ここまでくればあと少し」ということがチビツーにもわかれば精神的に楽になると思うのですが、こればっかりはチビツーのみぞ知るといったところでしょうか。
二人とも、また一つ逞しくなったように感じた背中でした。
ゴール間近、チビツーがポケットの存在に気づき、手を入れたり出したり。
「行儀わるーい」とチビワンが言うもそんなものはチビツーには通用しません。
兄弟仲良く「行儀わるーい」といいつつもどこか楽しそう。
ゴールが近いことがチビツーにも感じられたのか、草木に意識が向くなど余裕が出てきたようにも見えました。
そしてとうとう、自然観察の森入口まで戻ってきました。ここまでくればゴールも同然です。
木の香坂を下りれば上郷・森の家別館裏口です。
慎重な様子が窺えますね。
通用口を抜けると・・・
別館に到着です。
午後1時29分、無事に駐車場に到着しました。お疲れさま!
状況が飲み込めずよくわからん、といった感じになすがままのバンザーイ!(笑)
振り返って
まずはなんと言っても、最後まで帽子を被り続けてくれたこと!これは大大大成功でした。支援校での訓練の成果もあったとは思いますが、少しずつ抵抗を無くしてくれていたのは間違いないでしょう。これからの季節を考えると今回の成果は大きいですね。
山行スタイルについて改めて。歩行時間に関しては今日の結果からすると当面は2時間程度が限界でしょう。平坦であっても、やはりダラダラと歩くのはチビツーには合っていないと感じました。とはいえ急登は急登で「あせらずゆっくり」という制御もしにくい(=常に全力を出してしまいヘバる)ようです。
「坂よりも階段」というのは今日の歩き方でハッキリわかりました。そう簡単にバッチリ適したお山があるわけではないですが、今後の参考になるのは間違いないでしょう。
大きな成長を感じた山旅でした。
- 出発時刻 / 高度: 11:09 / 85m
- 到着時刻 / 高度: 13:37 / 86m
- 合計時間: 2時間27分
- 合計距離: 3.52km
- 最高点の標高: 156m
- 最低点の標高: 79m
- 累積標高(上り): 61m
- 累積標高(下り): 50m
Reliveで山行振り返り